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御挨拶

秋下会長

 高齢者では、生活習慣病などの慢性疾患のみならず老年症候群と称される高齢者特有な病状を合併し、容易にポリファーマシーとなりますが、加齢変化に基づく薬物感受性の増加とあいまって薬物有害事象の発生増大につながるリスクがあります。また、認知機能の低下、視覚機能の低下等により服薬管理能力が低下した結果、残薬の増加や服薬アドヒアランス低下を招き、思ったような治療効果が得られないことがあります。さらに、住環境も病院、施設、在宅などと変化することから、服薬環境という視点に基づく薬物治療方法についても研究する必要があります。
 地域社会では、すでにこのような問題が頻繁に起きていることが予想され、これまで以上に高齢者に対する薬剤師の支援介入が必要です。わが国の薬局数は5万7千店を超え、それら薬局に勤務する薬剤師は医療提供施設に勤務する薬剤師の7割を超えています。これを踏まえると、地域の社会資源として予防医療の観点からも薬剤師の有効的な活用が喫緊の検討課題です。平成28年4月の診療報酬改正により調剤薬局が地域で求められる役割はまさにそのような要求が反映されたものと考えられます。
 すでに超高齢社会で発生する諸問題に対処するために、医学、工学、経済学等の個々の学術領域のみならず、学際的な研究・実践も進んでいます。2025年問題、さらにその先にある2035年に向け、薬学の領域においても高齢者に特有な薬物療法を阻害する問題の増大に対し、早急に取り組みを開始する必要があります。
 以上のような問題に対処すべく、私たちは本年1月に「一般社団法人 日本老年薬学会」を設立いたしました。認知症、サルコペニア、フレイルなどの要介護状態への移行を防ぐという目標の中で臨床医、研究医、薬局薬剤師、病院薬剤師および薬学研究者や管理栄養士、そして製薬メーカーの医薬品情報担当者等の多職種間での連携を強化すために、このたび第一回の学術大会を開催する運びとなりました。
 超高齢社会の中で薬剤師をはじめとしたメディカルスタッフの更なる活躍に向けて、皆様にとって実りある大会なればと心より願っております。

 平成28年11月

第1回日本老年薬学会学術大会
会長  秋下 雅弘
東京大学医学部附属病院老年病科 教授